マルチマテリアル3Dプリントが家庭に降りてくる?

現在、「Bambu Lab A1 mini」という4色印刷ができる3Dプリンターを使っています。「シングルヘッド」方式のBambu Lab A1 miniは色を切り替える時にゴミが出るし、時間もかかる。これを解決するために、「マルチヘッド」タイプの3Dプリンターを探しています。

マルチヘッド3Dプリンターとは?- 1台で複数素材・多色を実現する技術

3Dプリンターにおける「マルチヘッド」とは、複数のノズル(ヘッド)やツールを搭載し、1回の印刷で複数の色や異なる素材(例えば、硬いPLAと柔らかいTPU)を使い分けることができる技術の総称です。

これまでは、主に以下の方式がありました。

  • IDEX (Independent Dual Extruders、Bambu Lab H2Dなど): 2つのヘッドが独立して動く方式。ミラーモードや複製モードといった使い方が可能ですが、ヘッド数に限界がありました。また、個人ユースでは手が出にくい価格帯です。
  • 単一ノズル・多フィラメント方式 (Bambu Lab A1シリーズなど): 1つのノズルに複数のフィラメントを切り替えながら供給する方式。手軽に多色印刷ができますが、色を切り替えるたびに大量の「パージ(捨て樹脂)」が発生し、時間と材料の無駄が大きいのが課題でした。
  • ツールチェンジャー: 1つのプリントキャリッジ(ツールを載せて動く部分)が、必要なツール(エクストルーダーとホットエンド)を自動で交換する方式。パージが不要で、異なる特性を持つツール(例:太いノズルと細いノズル)も使える究極の形とされていましたが、非常に高価で専門的な領域の技術でした。

これらの課題を解決し、「ツールチェンジャー」方式をより身近なものにしようとする動きが、2025年、一気に加速しています。

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低価格マルチヘッド3Dプリンターの登場 – 2025年は革命の年?

これまで業務用クラスの3Dプリンターにしかなかったツールチェンジャー方式が、ついに個人ユースに降りてこようとしています。ここでは、なんとか手が届きそうな3つの製品を紹介します。

Bondtech INDX – IH技術で既存プリンターを魔改造

スウェーデンの高性能エクストルーダーメーカーBondtech社が発表した、画期的な「ツールチェンジャー・システム」です。これは完成品の3Dプリンターではなく、既存の3Dプリンターに後付けで導入するためのアップグレードキットです。3DプリンターではメジャーなKlipperというオープンソースのシステムを使っているため、既存の3Dプリンターのアップデートが期待できます。もしかしたら、手元にあるプリンターもアップデートできるかも?

  • 革新的なIH(誘導加熱)技術: まるで調理器具のように、非接触でツールを瞬時に加熱。ツール自体にヒーターやセンサーが不要なため、ツールが非常に軽量・シンプルになり、高速な交換(約4秒で印刷温度に到達)を実現します。
  • DIYコミュニティとの親和性: VoronやRatRigといった自作3Dプリンターコミュニティを主なターゲットとしており、カスタマイズを前提とした設計思想です。
  • 特徴: 究極の柔軟性と、最先端技術を自分のマシンに組み込む楽しさを提供します。
  • 発売予定: 2025年11月下旬

WonderMaker ZR Ultra – 異種材料の組み合わせを実現する本格派

新星WonderMaker社から登場した、最大4つのツールヘッドを搭載可能な完成品の3Dプリンター。4台のツールヘッドを持つため、多色印刷だけでなく、異なる特性を持つ材料を組み合わせた「マルチマテリアル造形」も可能です。

  • 真のマルチマテリアル: 硬質なPLAで本体を作り、一部に柔軟なTPUで滑り止めを一体造形する、といった機能的なプロトタイピングが可能です。
  • ゴミ問題からの解放: ツールごと交換するため、フィラメントのパージが不要。材料の無駄を大幅に削減します。
  • 十分な造形サイズ: 300 x 240 x 290mmと大型の造形にも対応。
  • ステータス: 2025年4月頃にKickstarterでキャンペーンが開始され、成功しています。出荷が始まっているはずですが??

Snapmaker U1 Color 3D Printer – “無駄ゼロ"を掲げる高速多色プリンター

複合型3Dプリンターで実績のあるSnapmaker社が開発した、多色プリントに特化したモデル。4台のツールヘッドを持つため、「フィラメントの無駄ゼロ」と「高速性」を両立させた、まさにBambu Lab AMSの課題を正面から解決しにきた製品です。

  • 圧倒的な効率: 4つのヘッドを搭載し、わずか5秒で色を切り替え。パージが一切不要なため、材料を100%製品のために使えます。
  • 高速性能: CoreXY機構を採用し、最大500mm/sの高速プリントを実現。
  • エコシステム: 最適化された専用スライサーソフト「Snapmaker Orca」が用意されており、初心者でも扱いやすい設計です。
  • ステータス: Kickstarterで大成功を収め、2025年10月からの出荷を予定しています。

マルチヘッド3Dプリンター 詳細比較表

特徴Bondtech INDXWonderMaker ZR UltraSnapmaker U1
製品形態アップグレードシステム完成品3Dプリンター完成品3Dプリンター
中心的技術IH(誘導加熱)、パッシブツールツールチェンジャー4ヘッドツールチェンジャー
最大の強み革新性・拡張性異種材料の組み合わせ無駄ゼロ・高速多色
外観サイズシステムのため非該当約 539 x 503 x 590 mm約 542 x 515 x 620 mm
造形サイズ搭載プリンターに依存300 x 240 x 290 mm270 x 270 x 270 mm
ヘッド最大速度搭載プリンターに依存400 mm/s (推奨)500 mm/s
ノズル最大温度500℃ (対応ツール使用時)300℃300℃
ベッド最大温度搭載プリンターに依存100℃100℃
価格 (目安)未発表
(システムとして販売)
約 $1,299
(Kickstarter価格)
約 $1,199
(Kickstarter価格)
ターゲットDIYユーザー、上級者機能試作を行いたいエンジニア多色モデルを手軽に作りたい人
ステータス2025年11月下旬発売予定Kickstarterで発表2025年10月出荷予定

今後への期待 – マルチマテリアルが当たり前の時代へ

2025年は、デスクトップ3Dプリンティングにおける「マルチマテリアル元年」と言えるかもしれません。これらの製品の登場により、これまで一部の専門家のものであったツールチェンジャー技術が、一気に身近な存在になります。

これらの技術が成熟し、さらに低価格化が進めば、一家に一台「マルチマテリアル3Dプリンター」がある未来も、そう遠くないのかもしれません。

というわけで、Snapmaker U1 Color 3D PrinterをKickstaterで支援してみました。

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Posted by 好田 慎一